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【要約・書評】『フェルミ推定の技術』はマジでロジカルシンキングを超えていた

以前、Books&Appsさんへの寄稿記事で、神本『変える技術、考える技術』をご紹介しました。

まさに、ビジネスパーソンにとっての一丁目一番地ともいえる

「愛と想像力」を授けてくれたわけですね。

この感動体験は、今でも忘れません。


ただ一方で、「もっと読みたいな」と思っていた章がありました。

第3章 戦い方が異なる「答えのないゲーム」

この章です。


もちろん、本質論の部分は理解できたのですが、

「この本を書いた、高松さんの思考プロセスをもっと読んでみたい」

「高松さん答えのないゲームをどう解いているのかを知りたい」

…と思ったんですね。


そしたら、なんとなんと。

変える技術、考える技術』 の出版から2ヶ月も経たないうちに、新刊が発売されたんです。

タイトルは『ロジカルシンキングを超える戦略思考 フェルミ推定の技術』。


この本が本当に画期的でしたので、何としてでも紹介させてください。

フェルミ推定を勘違いしている人に、読んでほしい

「フェルミ推定」と聞いて、どんな印象をお持ちでしょうか?


「フェルミ推定って、コンサルの面接で使うやつでしょ」

「フェルミ推定って、頭いい人たちの高貴な遊びでしょ。マンホールとか電柱の数なんて計算しちゃってさ。ググればいいのに」

「フェルミ推定って、机上の空論でしょ。仕事じゃ使いもんにならん」

おおよそ、こんなところでしょうか。


こう思っている方、ぜひ本書を読んでいただきたい。

立ち読みでもいいので、「はじめに」と「第1章」だけ目を通してほしい。

気づいたら「フェルミ推定、ロジカルシンキングより、やべーぞ」と口ずさみながら、本をもってレジに並んでいるはずです。


「レジに行きたくない。Amazonで買いたい」という方。

今から、この本がどれだけすごいかをお伝えします。

もう少しお付き合いください。

フェルミ推定とは、答えの無いゲーム

さきほど述べた勘違いを解くためにも、まずはフェルミ推定の定義について、認識合わせをしましょう。

本書によると、「フェルミ推定とは、答えの無いゲーム」だと定義されています。


まだ誰もやったことがないような、新規事業の計画を立てるとき。

あるいは、社内の業務を効率化するときに、削減効果を見積もるとき。

あるいは、株や投資信託を買って、資産運用のシミュレーションをするとき。

これらは、いずれも「答えの無いゲーム」ですよね。

このゲームをクリアするのに不可欠なのが、フェルミ推定の技術です。


では、答えの無いゲームをクリアするためには、どんな技術が必要なのか?

それは「因数分解+値+話し方」です。

以上の全体像をざっくり示したのが、以下の図です。

これがまあ、 『変える技術、考える技術』 と同様、格言で溢れていまして。

  • 因数分解は、「現実(ビジネスモデルや社会)の投影」でなければならない
  • 因数分解は、「気持ち悪さドリブン」で考える
  • 値を置くときは、何度も「勘かな?」と口ずさむ
  • プロセスがセクシー=そのセクシーなプロセスから出てきた答えもセクシー。だから、値よりも解き方を相手に伝える

…など、フェルミ推定を「机上の空論」から「地に足がついた、ロジカルシンキングの上位互換」へと進化させる極意がギュッと詰まっています。

イケてるフェルミ推定と、イケてないフェルミ推定は、ここが違う

ここでもうひと押し、みなさんが抱く「フェルミ推定に対する誤解」を解いておきたいと思います。

「フェルミ推定なんて、机上の空論でしょ」という誤解。

こういう誤解を抱くのも、無理はありません。

なぜならば、巷のフェルミ推定本や記事が薄っぺらいからです。

そのことを本書は「コンビニの1店舗の売上は?」というお題を使いながら教えてくれます。

コンビニ1店舗の売上

=【レジの数】×【1時間でお客さんを捌ける数】×【営業時間】×【客単価】×【365日】

『ロジカルシンキングを超える戦略思考 フェルミ推定の技術』p84

一見すると、よくある分解に見えますが・・・

実は、こういう分解のやり方をしてしまうから、「フェルミ推定は机上の空論」と言われてしまうんです。

だって、よく考えればわかる通り、「コンビニの売上」と「レジの数」って、関係ありませんよね(笑)

もしこの因数分解が正しいんだとすると、「レジの数を増やす」という打ち手を打てば、売上が上がることになります。


では、コンビニの「ビジネスモデル=現実」を正しく投影させると、どんな分解ができるか。

筆者は次のように分解しています。

コンビニ1店舗の売上

=【このコンビニの周りに住む/働く人の数】×【このコンビニの利用頻度(週)】×【1回あたりの利用金額】×【52週】

『ロジカルシンキングを超える戦略思考 フェルミ推定の技術』p85

これは、地に足のついた分解ですよね。

コンビニのビジネスモデルを見事に表しています。

  • コンビニの周りに住む/働く人を増やしたければ、住宅地やオフィスの近くにコンビニを構える
  • コンビニの利用頻度を増やしたければ、何度も足を運びたくなるように、品揃えをタイムリーに入れかえる
  • 1回あたりの利用金額を増やしたければ・・・

…みたいに、現実的な打ち手を考えることもできます。


こういった「本物のフェルミ推定」と「偽物のフェルミ推定」を明らかにしたうえで、

「どうすれば、偽物のフェルミ推定に陥らないか?」

「どうすれば、本物のフェルミ推定を身につけ、仕事で活用できるか?」

を丁寧に指南してくれるバイブル。

それが『ロジカルシンキングを超える戦略思考 フェルミ推定の技術』 なんです。

フェルミ推定ができると、仕事の品質が格段に上がる

ここまで「フェルミ推定」を激推ししてきましたが、

どうしてここまでオススメするかというと、

シンプルに「実務でめちゃくちゃ使えるから」です。


例えば、

「ぶっちゃけ、この施策って儲かるの?」

「新システムを導入したときのROIは?」

「最近、部内のミーティング時間が長すぎると思うんだよね。ちょっと原因しらべといてもらっていい?」

「このタスク、いつ終わりそう?」

こういった質問、よく耳にしますよね。


そして「このタスク、いつ終わりそう?」と聞かれたら、

頭の中でこう考えるはず。

(大きくは、素案を作る→上長にレビューしてもらう→レビュー内容をもとに修正する→部長に承認を取る…みたいな段取りになりそう)

(素案を作るのは2日、レビューに1日くらいかかりそう。修正には…)

そして、「来週の○日までには終わりそうです。なぜならば~」と答えるのではないでしょうか。

タスクの手順を「因数分解」して、何日かかりそうか「値」を入れる。

フェルミ推定の手順と全く一緒ですよね。

そして、フェルミ推定の精度が高ければ高いほど、上記の質問に的確に答えることができます。


あるいは「ミーティング時間が長くなっている原因を調べよ」と言われたら、

「部内のミーティング時間=1回あたりの時間×回数×参加者」みたいに、まずは分解しますよね。

そして、各変数の値を聞いて回ったり、仮定を置いたりしながら、問題の箇所を特定していく。


ここでやっているのは、何も特別なことではありません。

みなさんもよく知る「ロジカルシンキング」を使って、プロセスで分けたり、原因の要素を分けたりしているだけです。

そして、その分け方に、より「リアリティ」を求められるのが「フェルミ推定」なわけです。

ロジカルシンキングを実務にグッと近づけるために生まれた武器。

それが「フェルミ推定」の正体です。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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